その他の技法

呂色仕上げ(ろいろしあげ)

 

塗りの仕上げには大きく分けて「塗立(ぬりたて)」と「呂色(ろいろ)」があります。上塗の肌をそのまま生かす塗立に対し、呂色は表面を研いだ後、漆を摺り込んでは磨くという作業を繰り返します。最後は職人の柔らかな手を使いって細かい傷も残らないよう磨き上げれば、鏡面のような艶が生まれます。漆独特の奥深く艶やかな質感がより深くなることによって、加飾の金銀が鮮やかに引き立ちます。艶上げ以外にも、様々な変塗や梨子地仕上げなども呂色職人が担当します。

変塗  (かわりぬり)

変塗とは、面白い模様や質感を表現する様々な漆技法のことを言います。この技法は古くは甲冑や刀の鞘塗に多く用いられていました。現在では主に家具や、普及品の漆器に使われています。青森県の津軽塗は優れた変塗として知られています。

絞漆(しぼうるし)という技法は、通常、豆腐、卵白または膠(にかわ)を使います。少量のタンパク質を上塗漆に加えると粘度が高い、乾燥の遅い漆になり、盛り上がった模様を描くことができます。普通は乾燥後に色漆を塗り、模様を研ぎ出して仕上げます。硬く、傷がつきづらいという長所から、机の上面の塗りにも適しています。

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七々子塗 (ななこぬり)

七々子塗は、上塗り漆が乾く前に菜種を蒔いてから漆を乾燥させます。漆が固まったら菜種を取り除き、色漆を塗って乾燥させたのち、研いで細かい輪紋を浮かび上がらせます。この技法はどんな作品にも使えます。菜種の周囲の漆が表面張力で引っ張り上げられることである種のクレーターができ、これが模様になります。

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石目塗(いしめぬり)

石目塗は、炭粉や乾漆粉を使って石のような質感を表す技法です。炭粉を不均一に蒔くことにより、まだらな石のような効果を得られます。全体に漆を塗って炭粉を定着させて研ぐと、つや消しの石のような質感が出ます。

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乾漆粉 (かんしつこ)

乾漆粉は、ガラス板の上に漆を何層にも塗り、乾燥したら剥がして砕き、細かい粉にしたものです。乾漆粉は単体で使うだけではなく、金銀蒔絵に色を加えられる色漆の粉もこの方法で作ることができます。乾漆粉は硬く傷にも強いので、テーブルの上面や、お箸の加飾にもよく用いられます。


 乾漆 (かんしつ)

乾漆は、7世紀頃に中国から伝わった技法です。古くは仏像の制作に用いられ、現在も関西地方の数カ所の寺院で見ることができます。これは、漆が完全に乾いてから次を貼るという方法で、麻布を何枚も型に貼っていく技法です。適度な厚みになったら型から取り外して仕上げます。

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貼(は)り抜(ぬ)き

貼り抜きは、乾漆によく似た技法で、麻布の代わりに和紙を使います。和紙は麻布よりはるかに薄いため、型から抜くためにはより多く貼り重ねる必要がありますが、そのため大変軽い素地ができます。貼り抜きは香合のような小さな器物によく用いられます。。

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一閑張 (いっかんばり)

一閑張りは、和紙を木や竹の胎に貼った漆器です。普通は米糊と生漆を混ぜた糊漆で1枚以上の和紙を貼ります。この仕上げは茶道の世界ではとても人気で、暖かみのあるつや消しの革のような質感があります。

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金継ぎ

金継ぎとは、壊れた陶磁器やガラス製品を修理する方法で、近年ちょっとした流行となっています。壊れた破片を小麦粉と漆を混ぜて作った麦漆(むぎうるし)という接着剤で繋ぎあわせたら、2週間ほどかけてしっかり固め、水で練った砥の粉と漆を混ぜた錆漆(さびうるし)で割れ目を丁寧に埋めます。その後、平らに研いで生漆で固めてから、補修した部分に絵漆を塗り、そこに細かい金、銀、プラチナ粉を蒔きます。これが乾燥したら生漆で粉を固め、乾いてから磨いて仕上げれば、壊れた器が新しく蘇るのです。

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