銀の物語
長年い歴史とともに高いレベルの芸術的な銀製品を生み出してきたイギリスで、銀製品が大好きだった母のもとで育った私は、銀には深い思い入れがあります。「蒔絵」とは文字通り、様々な荒さのの金銀の粉末を使って模様を描く、「蒔いた絵」を意味しますが、私は銀を絵ではなく、色として使いたいと思いました。イギリスの銀細工職人の作った素晴らしい作品の下手な模造品を作るのではなく、自分のルーツを尊重しながら、彼らが作れなかったものを作りたいと思いました。私はずっと中世ヨーロッパのファンであり、塔の中に住むお姫様やアーサー王、円卓の騎士と銀の聖杯の話などが大好きです。漆を使うと、かつてない銀の質感を表現できることに気づきました。レース、麻布、和紙を使い、金属独特の重量感を感じさせない面白い表現ができると同時に、色漆を使えばアーサー王の宮廷を彷彿とさせるような、古代の雰囲気を醸し出す着色銀の効果が出せることもわかりました。私はこの技法を様々な螺鈿やコラージュ作品に応用しています。