和紙の物語
奈良で作られる最高級の手漉き和紙は、古くから上塗漆を濾すだけでなく、乾漆技法において、布目を目立たなくする素材としても使われていました。また、竹や木の上に和紙を貼って、茶道の世界で大変好まれる繊細で柔らかいつや消し仕上げにする古い技法や、欧米のパピエ・マッシェによく似た、和紙で素地を作る技法もあります。かつて私はこのように和紙を使っていましたが、旅先で異なる風合いの和紙に出会い、和紙をコラージュのように切って模様を作るのも面白いことに気づきました。この上に金銀の蒔絵、または溜塗を施せば和紙の質感が強調され、これによって新しい表現方法が生まれました。これらのほとんどは輪島塗の器の仕上げに使いましたが、レースのように和紙だけで素地を作れば、軽く、海外でも変形しない器ができるというのも魅力的です。
福井県立大学での伝統工芸の存続活動に協力した時には越前和紙を紹介されました。以来、和紙は単に作品に取り込まれてしまう素材ではなく、作品の魅力を増加させる名パートナーとなりました。