レースの物語
作品にレースを使ったのは、親友の結婚祝いの品の補強の麻布の代わりにしたのが最初です。私は友人の結婚祝いに夫婦茶椀を作ろうと考えました。日本では普通、女性用のお椀は男性用より小さく作るのですが、私は同じ大きさのお椀を作りたかったのです。そこで、お椀の区別がつくようにパリで買ったレースを使うことにしました。私はレースの質感が好きなので、椀木地に模様の違うレースを貼り、模様がよくわかるよう溜塗(ためぬり)を施しました。しばらくしてから、乾漆技法を応用すれば、レースで漆の素地を作ることができると気づき、ブローチを作りました。しかし、レースの切り口が気に入らなかったので、次の作品では小さい香合の縁に亜麻紐を埋め込み、切り口の荒さが気にならないように工夫しました。次はレースの幅よりも大きい作品に挑戦し、乾漆素地の本体に窓を開け、レースで作った乾漆板を埋め込みました。